中度知的障害とは？大人の特徴や就労・将来の生活設計を支える支援制度について解説

中度知的障がいのある家族の将来について、「どんな働き方ができる？」「利用できる支援制度は？」と不安を抱える方は少なくありません。

中度知的障がいのある大人は、特性に合った支援を受けることで、働く力や生活能力を伸ばせます。

本記事では、中度知的障がいの特徴から、大人が利用できる就労支援・生活支援、制度の違い、選び方のポイントまでを分かりやすく解説しています。

支援先に迷いやすいご家族に向けて、“安心して選べる道しるべ”となる情報をまとめていますので、今後の選択にぜひ役立ててください。

中度知的障害とは？定義とIQの目安

中度知的障がいとは、知的発達の遅れが比較的はっきりと見られ、日常生活を送る上で一定の支援を必要とする状態を指します。

知能指数（IQ）の目安としては35〜50程度とされ、精神年齢は8〜9歳くらいに相当します。

ただし、これはあくまで一つの目安で、能力には個人差が大きく、特定の得意な分野では目安以上の高い理解力やスキルを示す方も少なくありません。

中度と軽度・重度の違いとは？

知的障がいは、必要な支援の度合いによって「軽度」「中度」「重度」に分けられます。

それぞれの違いを、以下の表にまとめました。

区分	IQの目安	支援の必要性
軽度	50～70	・基本的な生活習慣や身の回りのことは自分で行える ・社会生活では部分的な手助けが必要
中度	35～50	・食事や着替えなど身の回りのことは練習すればできる ・日常生活や社会生活では、継続的な支援や配慮が必要
重度	35未満	・身の回りのことや食事・入浴を一人で行うことが難しい ・日常生活全般で、広い範囲の手助けや介助が必要

中度知的障がいは、軽度と重度の中間で「日常生活の安定に継続的な支援が欠かせない状態」と理解すると分かりやすいでしょう。

大人によくある中度知的障害の特徴

ここからは、中度知的障がいのある方によく見られる特徴を、以下の3つの側面から見ていきましょう。

よく見られる傾向やフォローが必要となる場面について整理しているので、ぜひ参考にしてみてください。

コミュニケーション・会話の傾向

大人の中度知的障がいでは、コミュニケーション面に以下のような特有の傾向が見られます。

項目	特徴
言語表現の制限	・日常会話は可能 ・長い話や複雑な話題は理解しにくい ・発話が短く単純になりやすい
非言語的理解の課題	・表情や空気を読み取りにくい ・暗黙のルールを理解しにくい ・誤解やすれ違いが生じやすい
対人関係の傾向	・家族や身近な支援者を大切にする ・信頼関係が築けると安定して長く続く ・関係構築のペースがゆっくりになりやすい

会話の理解のスピードや、関係づくりのペースには個性があることを覚えておくといいでしょう。

日常生活・実用的スキルの特徴

生活スキルは練習によって向上する一方、以下の場面では継続的なサポートが必要になることもあります。

項目	特徴
身辺自立	・基本的な身の回りのことは自立できる傾向がある ・忘れやすいことがある ・清潔面のフォローが必要な場合あり
家事・生活管理	・同じ手順の家事は習得しやすい ・時間管理や計画は苦手 ・抜け漏れが出やすい
居住環境	・一人暮らしは難しい場合が多い ・見守りのある住まいで安定しやすい ・環境調整で自立度が上がりやすい

日常生活では、「自分でできること」と「支援があると安定すること」を分けて考えましょう。

就労と仕事の特徴

中度知的障がいは、働く場面でも、特性による得意・苦手がはっきり現れます。

長期的な就労を目指すうえで、押さえておくべきポイントを以下にまとめました。

項目	概要
向いている仕事	・ルールが明確 ・手順が一定で、繰り返し作業が中心の業務に適性がある
職場での課題	・状況判断が変わる場面が苦手 ・新しい業務や応用が必要な仕事は負担になりやすい
スキル習得の特徴	・仕事を覚えることに時間がかかる ・抽象的・複雑な指示は理解しにくい
必要な支援	・指示の具体化があると安定しやすい ・報連相をサポートしてくれる支援者の存在が有効

得意・不得意やこだわりを理解しないまま仕事を選ぶと、長続きしない場合があります。

長期的なキャリアを築くためには、就労移行支援などの支援制度を利用して自己理解を深めることが大切です。

▼就労移行支援が向いている人の特徴が知りたい方はこちら
就労移行支援が向いている人と向いてない人の特徴は？判断基準や体験談を紹介

中度知的障害に向いている仕事

中度知的障がいの方には、手順が明確で、繰り返し作業が中心の仕事が向きやすいとされています。

以下に、向いている仕事の特徴と具体例を表でまとめました。

仕事の特徴	向いている理由	具体的な仕事例
繰り返し作業が多い	同じ流れで進められるため覚えやすい	・商品の梱包 ・ピッキング ・部品の組み立て ・食品加工・盛り付け
手順が明確	マニュアル通りに進められ、変化が少ない	・清掃業務 ・食器洗浄 ・クリーニング補助 ・農作業補助
集中して取り組める	丁寧にコツコツ進める力が評価されやすい	・シール貼り ・仕分け ・検品 ・軽作業全般
支援員と連携しやすい	指示の整理やフォローが入りやすい	・障がい者雇用枠の職場 ・就労移行支援事業所 ・A型・B型事業所

長期的な就労を目指せる職場を選ぶためには、「得意な作業」「負担になりやすい作業」を整理することが大切です。

中度知的障害のある大人の支援制度の選択肢

中度知的障がいのある方が社会で働き、自立した生活を送るためには、さまざまな支援制度の活用が欠かせません。

ご本人がどの段階にいて、何を目標にするかによって、適した支援は異なります。

本項では、以下の支援制度の内容と、利用によって目指せる姿について解説します。

支援制度	おすすめの方
就労継続支援A型・B型	・すぐに一般企業で働くのは不安 ・まず働く経験を積んで生活リズムを整えたい
ハローワーク	・仕事に関する情報収集や相談をしたい ・自分に合う求人を探したい
自立訓練	・まず生活スキルを安定させたい ・金銭管理や家事に不安がある
地域障害者職業センター	・専門的な職業評価や支援計画について相談したい ・自分に合う働き方を専門家と一緒に考えたい
就労移行支援	・一般企業への就職を目指している ・就職に必要なスキルを学びたい ・就職活動のサポートを受けたい

現状の困りごとや将来の希望と照らし合わせながら、どの支援が必要か、どの制度が適しているかを確認してみてください。

就労継続支援A型・B型

就労継続支援A型・B型は、福祉サービスを利用しながら働く経験を積み、就労に必要な力を段階的に伸ばせる制度です。

主な支援内容とおすすめ理由を、以下にまとめました。

就労継続支援事業所では、生活指導員や職業指導員によるサポートを受けながら職業訓練を受けられる点が魅力です。

A型・B型の2種類があり、主に雇用形態・報酬・勤務頻度などの柔軟性に違いがあります。

項目	A型	B型
契約	事業所と雇用契約を結ぶ	雇用契約は結ばない
報酬	最低賃金以上の給与	作業量に応じた工賃
勤務ペース	一定の勤務時間が必要	体調やペースに合わせて柔軟に利用可
向いている方	・通所が安定している ・一般就労も視野にある	・体力や集中力に波がある ・自分のペースで働く練習から始めたい

A型かB型を選ぶ際は、体調の安定度や通所の継続性、働ける時間を基準にすると判断しやすくなります。

毎日通える安定したペースがある場合はA型、体調の波があって短時間から始めたい場合はB型が適しているケースが多いです。

特に中度知的障がいの方は、「無理なく通い続けられるか」「適切な支援を受けられるか」が長く働くうえで重要なポイントになります。

長期的に一般就労を目指す場合は、就労継続支援で働くスキルや生活習慣を整えたうえで、就労移行支援へステップアップする方法も選択肢のひとつです。

▼就労移行支援と就労継続支援の違いについて詳しく知りたい方はこちら
「就労移行支援」と「就労継続支援」の違いとは？A型・B型の違いも解説

ハローワーク

ハローワークは、地域の求人情報が集まる公的な窓口で、障がいのある方に向けた専門相談も受け付けています。

主な支援内容とおすすめ理由は、以下のとおりです。

ハローワークは、求人情報の収集や相談支援に強みがあり、気軽に仕事探しを始められる場所として利用しやすい窓口です。

一方で、提供される支援の中心はあくまで相談と求人紹介であり、働くための基礎スキルを身につけるような実践的トレーニングは行われません。

そのため、体力づくり・集中力・ビジネスマナーなど、働くための土台を整えたい場合は、就労移行支援などの実践的な支援サービスと併用するとより効果的です。

自立訓練

自立訓練は、働く前に必要となる生活面の基盤づくりをサポートする制度です。

主な支援内容とおすすめ理由を、以下にまとめました。

朝起きる時間が安定しない、家事が思うように進まないなど、生活面での困難が特に大きい場合には、自立訓練がおすすめです。

生活が整っておらず安定して通所できない状態では、支援制度を利用しても成果につながりにくい場合があります。

そのため、一般就労を目指していても安定的な通所が難しい段階では、自立訓練で準備を進めるのもひとつの選択肢です。

▼自立訓練と就労移行支援の違いについて詳しく知りたい方はこちら
自立訓練と就労移行支援の違いは？併用の可否や自分に合ったサービスを選ぶポイントを解説

地域障害者職業センター

地域障がい者職業センターは、働くことに関する専門的な評価や助言を行う機関です。

主な支援内容とおすすめ理由は、以下のとおりです。

地域障がい者職業センターは、求人紹介は行っておらず、評価後は必要な機関へ引き継ぐ仕組みです。

自分に合う働き方や配慮事項を知りたい方に向いている支援機関と言えるでしょう。

就労移行支援

就労移行支援は、一般企業への就職を目指すために、訓練・実習・就職活動のサポートを受けられる福祉サービスです。

主な支援内容とおすすめ理由は、以下のとおりです。

就労移行支援は対人スキルなど、長く働き続けるための力を段階的に身に着けることが可能です。

ただし、事業所によって力を入れているプログラムなど特徴が異なるため、どこを選ぶかが働き続けやすさにも影響します。

アビリティーズジャスコでは、自己理解を深めるプログラムを通して、自分の特性に合った対処法を学ぶことができます。

さらに、豊富な実習機会を通じて就職後のミスマッチを防ぎ、長く働き続けるための基盤づくりをサポートしています。

一般就労において悩みがある場合は、ぜひアビリティーズジャスコにご相談ください。

中度知的障害の方が支援の選び方に迷ったときの判断軸

中度知的障がいのある方やご家族は、「どの支援制度があっているのか」と、迷う場面が多くあります。

そんなときは、次の3つのポイントを目安にすると良いでしょう。

上記の3つを意識しておくと、「制度ありき」ではなく、本人に合った支援を選びやすくなります。

本人の特性を理解する

中度知的障がいのある方が利用する支援は、IQ値だけで決められるものではなく、「生活の中で実際に何ができて、どこに困難があるのか」にもとづいて選ぶのが大切です。

特に次のような点を確認しておくと、支援のミスマッチを防ぎやすくなります。

中度知的障がいの特性が整理されていないまま仕事や支援を選ぶと、負担が大きくなり、長く続けにくいケースがあります。

得意・不得意・こだわりを明確にし、目指したい姿と比べて「今どの段階にいるのか」を把握したうえで、本人に合う支援を選ぶのが重要です。

医療機関・支援機関・自治体窓口を活用する

支援を選ぶ際は、本人と家族だけで判断するのではなく、複数の専門機関と相談しながら進めることが安心につながります。

相談先	できること
医療機関 （主治医・精神科・心療内科）	・診断内容の確認 ・症状の安定度の評価 ・療育や治療方針の整理
発達相談支援センター・相談支援事業所	・生活や就労の困りごとのヒアリング ・適した福祉サービスの提案 ・サービス利用計画の作成支援
自治体の障がい福祉課	・障がい者手帳の申請手続き ・福祉サービス利用の窓口 ・就労移行支援などの制度相談

活用する制度を決めたあとも、実際に本人に合うかどうかは使ってみないと分からない場合が多くあります。

見学や短期の体験利用を通じて、事業所の雰囲気、支援員との相性、通所ペースの負担などを確認しながら選ぶことが、中度知的障がいのある方にとって無理のない支援選びにつながります。

中度知的障害の特性に合った支援制度が就労を支える

中度知的障がいのある方が安心して社会で働くためには、「本人の特性や能力に合った支援制度」を選ぶことが重要です。

適切な環境やサポートが整えば、働く力を発揮しやすくなり、自信を持って社会の一員として活躍できます。

一般就労を目指す場合は、ビジネスマナーや実習、応募支援を受けられる就労移行支援の活用がおすすめです。

なかでもアビリティーズジャスコは自己理解を深める支援に力を入れており、得意・不得意を整理しながら、自分の特性に合った仕事や働き方を見つけやすい点が特徴です。

一歩踏み出して就職を目指すなら、ぜひ一度アビリティーズジャスコにご相談ください。